桔梗



SIDE 沙理

今田さんに初めて会ったのは、理人が日本に戻ってきてからすぐのことだった。
2年少しの海外出向を終えて戻ってきて彼の新人教育を やることになったそうだ。
理人は、入社半年で海外出向に行かされ、新人教育をやることが出来ずにいたから、凄く張り切っていた。

その当時の私は、精神的に不安定でいくら保育士になると頑張っていても実習を受けるにつれて、向いていないんじゃないのかとマイ ナス思考だった。
それとまた理人が海外に行ってしまうんじゃないかって不安でしょうがなかった。


理人が海外出向に行くと決まった時、私は遠距離なんて無理と思い別れて欲しいと頼んだ。
理人はそれを認めなかった。
理人が出発するま でこのことについて話し合い結論はでなかった。
私がわがままだったんだ。
理人は必ず私がいて欲しい時に側にいてくれた。
それなのに今度から、誰が側にいてくれるんだろう…と。
理人の想いを疑ったことはないけれど、触れ合えない中で“信じる”事は、出来ないだろうと。
そう思っていたのに、必ず月に1回は会いに来てくれたし、メールもくれた。
“信じる”ことが出来ないと思ったけれど、単に私が精神的に 理人に依存しすぎていただけだった。
そんなんじゃいけないと思い必死で勉強したし、自分を磨いた。
その後、別れ話のことはすっかり忘れ さられた。


理人の新人教育をする人に会ったのは、偶然だった。
理人と買い物に出ていたデパートで初めて知った。
「パパ」と言ってしがみ付く子を 困ったように見ていた人――それが今田さんだった。
あまりにも困り果てているので、女の子が迷子になって自分の父親に似ていた人にし がみついたんだろうと思い女の子に声をかけた。
そうすると彼は、ほっとした様子だった。
私が、女の子に離しかけ両親に関する情報を探 っていると、急にいなくなった私を心配して理人が理人が駆けつけてきた。
そこから交流が始まった。


彼には、可愛い彼女がいる事は、聞かされていた。
そんな中、彼にも海外出向の辞令がでた事、その事によってプロポーズするって言って いた。
だから、彼女が倒れたことに驚きを隠せなかった。
そして、プロポーズを断られていたなんて……。
その上、親友に裏切られていた 事実。
彼を打ちのめすには充分な出来事だった。


それから、彼は彼女を守るために策を巡らせた。
結局、彼女と別れたようにして、沖縄に住ませ姿を消したように偽った。
その作戦は上手くいっていた。彼が外国にいる間は…。

今回、彼の帰国が決まったのと同時に作戦を変えないといけなくなった。
慎重にしなくてはならない。
でも、彼女はストーカーのように付いて来ていた。
そして、私に敵意を向けた。
恐かった。
だから、私の側に 来た理人の腕を力いっぱい掴んでしまった。
理人は、気付いた様子で私の視線の先を見てその理由を知った。


その後の話し合いは、中々進まなかった。
でも、彼も追い詰められているし、彼女も追い詰められている。
彼女は、今誰よりも彼に側にい て欲しいはずなのに…。


結局、彼は彼女を自分の元に呼ぶことにした。


彼らは偽りの関係を断ち切ることが、出来るのだろうか?
何事もなく、解決すればいいが…。そんなに簡単に解決するはずはない。
けれど、ここまで大事になるとは誰にも予想がつかなかった。


桔梗 花言葉…変わらぬ愛


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